瓶詰め

1/5

2661人が本棚に入れています
本棚に追加
/703ページ

瓶詰め

 それで私、あの直後意識を失って――。  気がついたら〝瓶詰め(こんなこと)〟になっていた。 「あーん、私のバカっ」  小さくつぶやいたら、一緒に詰められている花々にクスクス笑われた気がして。  花々と花々里(わたし)。  字面が似ているだけにシャレにならない気がしてしまう。 「頼綱(よりつな)、心配してるかな」  いや、それよりも私にお使いを頼んだ八千代さんの方が困っていそうだ。  私が帰らないと、今夜の夕飯の食材も御神本(みきもと)家に戻らない。 「――を探していらっしゃるのですね? そんな貴方にピッタリの商品がございます」  と、向こうのほうから久遠(くおん)さんの声がして。  木枠の中に入れられていたらしい私入りの球形のがふわりと持ち上げられた。  ここに至ってようやく私、事態の重さに気づいたの!  ひょっとして私、めちゃくちゃ小さくなってない!?  一緒に瓶詰めされている花たちが、私と同じようにサイズダウンしていたから気づかなかった。  木枠の中とはいえ、全体が覆い尽くされていたわけじゃない。  もっとしっかり周り――瓶の外を見回していれば気づけたのかもしれないけれど、グラグラするのが怖くて、私、足元ばかり見ていた。
/703ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2661人が本棚に入れています
本棚に追加