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お風呂場から戻ってきた頼綱が、「じゃあ始めようか」って私を見つめてきて。
私は生唾を飲み込んで、大きくうなずいた。
キュッという音がして、瓶の上部にはめられていたコルク栓が抜かれる。
フタがされていても息苦しくなかったところを見ると、あのコルクには空気穴が開いていたのかな?
そんな風に思って見上げていたら、上から頼綱の指が伸びてきて、私の頭にそっと触れる。
指先から、嗅ぎ慣れた頼綱の香りがふんわり漂ってきて、胸の奥が締め付けられるほど切なくなった。
頼綱のこと、信じてます!
私、ちゃんと元に戻って、今まで以上に家事頑張るから!
「掛けるよ?」
頼綱の声がして、私は聞こえないのは承知で、「はいっ!」って大声で答える。
と、頭に乗せられた頼綱の指を伝わるようにして、トロリとした冷たい液体が頭上から流れ落ちてきて。
ああ、この指はそのために――。
てっきりダイレクトに小瓶の中身がザバザバと自分に降ってくると思っていた私は、頼綱の気遣いにキュンとする。
トロトロと全身を伝い落ちる琥珀色の甘い蜜は、冷んやりと肌の上を滑り落ちて。身体全体にプチプチと弾けるような気泡がついた。
気がつけば、私、全身を蜜でコーティングされたみたいになっていた。
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