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「平気かね?」
不意に頭の上に乗せられていた指が離れて、横から覗き込むようにして様子を確認された私は、ドロドロになった自分の姿がにわかに恥ずかしくなって、思わず両手で胸元を隠すようにしてその場にうずくまる。
「大丈夫そうだね」
その様子にクスッと笑うと、頼綱が私を連れて浴室に入った。
バスタブに溜まったお湯の湯温を指先で確認してから、洗面所に置かれていたコップで中のお湯をすくって。
「入れるよ?」と宣言して、私が小さくうなずいたのを視認してから、今度は瓶の側面を伝わせるようにしてそっとお湯を流し入れてきた。
冷たかった蜜の時と違って、今度は温かいお湯が足元から徐々に増えてくる。
全身がホワリと温もりに包まれるのに安心した私だったけれど、段々水位が上がってくるにつれて、スカートが浮力でブワリと持ち上がってしまうことに気がついて、慌ててそれを押さえつけた。
ヤダッ、下着見えちゃうっ。
思ってスカートの裾をぎゅっと両ももの間に挟むように固定してから、ハッとした。
さっき頼綱、下着は買えなかったって……言ってなかった?
私、大きく戻れた後、どうなっちゃうんだろう!?
そんなことを考えている間にも、どんどんお湯嵩は増して行って。
とうとう私は瓶の中で甘ったるい香りのする生暖かいお湯に完全に浸されてしまった。
頼綱がそんな私を確認して、「花々里、俺がついてるからね」って言いながら上のコルク栓をもう一度閉めて。
その瞬間、スカートを押さえていなきゃ!とか、そんな心配は全部どこかに飛んでいってしまった。
そんな瑣末なこと、どうだっていいの。
私、絶対無事生還するんだ!
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