■スタ特④『春の味覚』

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 今日の夕飯の献立は、たけのこご飯、鮭とキノコのホイル焼き、春キャベツと新玉ねぎの味噌汁、菜の花のおひたし、タラの芽の天ぷらだった。 「タラの芽の天ぷら、美味(うま)かったね」  風呂上がり、花々里(かがり)の部屋のドアをノックして、今まさに風呂へ行こうと準備をしている花々里の手を止めさせる。  夕飯に、八千代さんが知り合いから譲り受けたという天然物のタラの芽の天ぷらが出て、花々里(かがり)が大喜びだったのを思い出して、思わず口の端が(ほころ)んだ。 「うん、すっごく!」  俺が部屋に入ってきた瞬間には、明らかにソワソワした様子だったくせに、タラの芽(たべもの)の話をしたらそう言うのがポンと飛んでしまう辺り、花々里らしい。  たまらなく愛しいと思う反面、俺以外の前でも?と思ったらいささか不安になる。  八千代さんのはからいで、俺の取り皿よりも花々里の皿の方が幾分多めに天ぷらが取り分けられていたことに、この子は気づいていただろうか。  取り箸で花々里の皿に俺のより少し多めに天ぷらを盛り分けながら、こちらを見て「宜しいですよね?」という視線を投げかけてきた八千代さんのしたり顔を思い出す。
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