■スタ特④『春の味覚』

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「そうだな。俺のタラの芽(とりぶん)を味わったその可愛い唇で、にキスしてくれるとかどうだろう?」  チョンチョン、と自分の唇を指先で指し示したら、途端花々里(かがり)が真っ赤になって「そっ、そんなのっ、む、無理に決まってるっ」と大慌てで全否定するんだ。  その全力でフルフルと首を振る仕草が、怯えた小動物みたいで本当に愛しくて。  俺の花々里はなんて初心(うぶ)でオクテなんだろうと微笑ましく思う。 「じゃあどこなら平気なのかな?」  それでも対価をもらうことだけは譲れないんだよ?と言外に含めたら、ソワソワと泣きそうな顔で俺を見つめてきた。 「ほ……」  ややしてポツンと小さくつぶやかれた声に、俺は全神経を傾ける。 「ほ?」  聞き返したと同時、(かす)めるように花々里の柔らかな唇が頬に触れて。  え?と思った時には「はい、おしまいっ!」とシャッターを降ろされてしまった。  ねぇ、花々里、今ので終わりとか本気で言ってるの?  俺はあまりの電光石火ぶりに一瞬固まって、でもすぐにいいことを思いついてニヤリとする。
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