■スタ特④『春の味覚』

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片頬(かたっぽ)だけ? こっちにはしてくれないの? 唇と頬じゃ、1回のキスの重みが釣り合わないと思わない?」  唇が触れていない左側の頬を花々里(かがり)の方へ向けて、わざとらしく指先で「ここ」と教えると、花々里が真っ赤な顔をして瞳を潤ませるんだ。 「改めてするのとか、恥ずかしいって思ってる?」  分かっていて敢えて問いかけたら、これ幸いと思いっきりうなずいてくる。 「じゃあ、俺はここで動かないようにしてるから、花々里は目をつぶってキスしたらいいんじゃないかな? 見えなければ恥ずかしくないだろう?」  下心を押し隠して至極真面目な顔をしてそう言ったら、「よ、頼綱(よりつな)もっ」って唇をとがらせてくるのとか、想定外なんだけど。 「俺も?」  キョトンとしたら、 「頼綱も目、つぶって!」  目端を赤く染めた大きな目でじっと見上げられた俺は、花々里のあまりの愛くるしさに息を呑んだ。 「目っ!」  再度(うなが)された俺は、少し腰を低めてまぶたを閉じる。  と、花々里(かがり)がそっと近づいて来たのが分かって。
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