■スタ特④『春の味覚』

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 すかさずギュッと小さな身体を抱きしめると、俺は当初の計画通り彼女の唇を奪った。 「ん、……んっ!」  驚いて逃げようとする花々里の後頭部を押さえて、さらに一層口付けの角度を深くする。  様子を見ながら彼女の唇に舌を這わせると、やり過ぎたかな。  途端、花々里にドンッと強めに胸元を叩かれた。  ――今日はここらが潮時、かな。  そう思って唇を離すと、すぐさま   「ほ、ほっぺじゃないじゃないっ! 頼綱(よりつな)の嘘つき! 超過分、美味しいもので返してっ!」  唇に手を当てて、花々里が涙目で睨みつけてくるんだ。  そんな花々里にクスッと笑って「了解」と告げると、俺はくるりと(きびす)を返して彼女には見えないところで笑みを深める。  花々里はきっと、そんな俺の背中をあの大きくてウルウルの、まつ毛バシバシの目で睨みつけていることだろう。  さて、次は何を理由に花々里に触れようかな。  タラの芽が終わったら次はフキだよね。  色々思いを巡らせると、今まではそれほど興味のなかったあれこれの旬の食材たちが、これまで感じたことがないくらい魅力的に思えてきた。  花々里が我が家に来てくれて、俺の世界は色鮮やかになった気がする。  花々里となら、きっとインスタントラーメンだってご馳走になるだろう。  そんなことを思った。     END(2021/04/10-4/27)
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