2662人が本棚に入れています
本棚に追加
/703ページ
仕事で嫌なことがあって、少し沈んだ気持ちで帰宅したら、花々里が「お帰りなさい」と言うなり俺の顔を見て嬉しそうににっこり微笑んだ。
その顔を見ただけで、俺は外であった負の感情が吹き飛んで行くような気持ちに包まれる。
「……頼綱、もしかして、疲れてる？」
だが、俺の変化を目ざとく察知した花々里に眉根を寄せられて、俺もまだまだだなぁと思う。
「仕事でね、少し嫌なことがあっただけだよ」
花々里に隠し事は出来ない。
そう思って素直にそう言ったら、花々里が俺の顔を見上げて少し考える素振りをしてから、
「あ！ そうだ！」
ふと何かを思いついたみたいに「ちょっと来て？」と俺の手を引っ張る。
そんな花々里にせき立てられるように彼女の部屋の前まで行って――。
「入って？」
俺が部屋に入ることに何の警戒心も抱いていなさそうな花々里に、中へ入るよう誘われた。
最初のコメントを投稿しよう！