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「美味しいよ? 頼綱も食べてみない?」
花々里がそう聞いてくれたから、「ではひとつもらってみようかな?」と応えたら、途端、何故か花々里が俺に背を向けてしまう。
ん?
あげると言ったのは社交辞令で、実は惜しくなったとか?
花々里ならそれも有り得る気がして、「無理にくれようとしなくても大丈夫だよ」と言おうとしたら、「ガァガァ!」と言いながら花々里がこちらを振り返った。
俺はそれを見て思わず吹き出してしまう。
だって俺の可愛い花々里が、ポテトチップスを2枚、アヒルのクチバシに見立てて口に咥えていたんだからね。
「ねぇ花々里。それはキスの要領でおひとつどうぞ?っていうお誘いだと解釈したんで構わないかな?」
花々里の腰をぎゅっと引き寄せて、ポテトチップスを唇に挟んだ彼女の顔を間近で覗き込んだら、真っ赤な顔をしてフルフルと首を横に振る。
そうだよね。
奥手な花々里が、そこまで気が回っていないことなんて、もちろん俺だって先刻承知だよ。
キミはただ、俺を笑わせたい一心でこんなことをしたんだよね。
けど――。
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