■スタ特⑤『サワークリームオニオン』

5/6

2662人が本棚に入れています
本棚に追加
/703ページ
「美味しいよ? 頼綱(よりつな)も食べてみない?」  花々里(かがり)がそう聞いてくれたから、「ではひとつもらってみようかな?」と応えたら、途端、何故か花々里(かがり)が俺に背を向けてしまう。  ん?  あげると言ったのは社交辞令で、実は惜しくなったとか?  花々里(かがり)ならそれも有り得る気がして、「無理にくれようとしなくても大丈夫だよ」と言おうとしたら、「ガァガァ!」と言いながら花々里(かがり)がこちらを振り返った。  俺はそれを見て思わず吹き出してしまう。  だって俺の可愛い花々里(かがり)が、ポテトチップスを2枚、アヒルのクチバシに見立てて口に(くわ)えていたんだからね。 「ねぇ花々里(かがり)。それはキスの要領でおひとつどうぞ?っていうお誘いだと解釈したんで構わないかな?」  花々里(かがり)の腰をぎゅっと引き寄せて、ポテトチップスを唇に挟んだ彼女の顔を間近で覗き込んだら、真っ赤な顔をしてフルフルと首を横に振る。  そうだよね。  奥手な花々里(かがり)が、そこまで気が回っていないことなんて、もちろん俺だって先刻承知だよ。  キミはただ、俺を笑わせたい一心でこんなことをしたんだよね。  けど――。
/703ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2662人が本棚に入れています
本棚に追加