■スタ特⑤『サワークリームオニオン』

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 俺は花々里(かがり)のあごをそっと持ち上げると、彼女が()んだままのポテトチップスの一枚を唇で挟み取った。  そんな俺の動作を、花々里(かがり)が瞳を見開いて固まったように見上げてくる。  ――ああ、俺のフィアンセはなんて可愛いんだろう!  医科(うちの)大学への編入試験がうまくいくまでは、不用意に手出しはしないと心に決めたんだがね。  これはなかなかに手強いな、と俺が思っていることになんて、花々里(かがり)は微塵も気付いていないんだろうな。  程よい酸っぱさと、クリーミーな味、そうしてポテトの風味と玉ねぎの香りに包まれながら、俺は小さく吐息をついた。  そういえばこの前はとんがりコーンを指にはめて「はいどうぞ」ってされたっけ。  あの時にも、花々里(かがり)の小さな指ごとそれを頂いて、彼女を真っ赤にさせたっけ。  年上として食べ物で遊んではいけないよ、と言わねばならないとか、そんなことが全部吹き飛んでしまうほど、花々里(かがり)の取る行動のあれこれが突飛で愛らし過ぎて。  いつかお菓子なんかじゃなく、花々里(かがり)自身をいただける日がくるのを、俺は心待ちにしているんだよ?  そんなことを言ったら、キミは一体どんな顔をするんだろうね?     END(2021/08/05)
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