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「頼綱っ」
照れ隠しのように思わず彼の名を呼んだら、嬉しそうに目を眇められて。
「俺もね、きっと娘が生まれても、花々里が1番綺麗だと感じる気持ちにブレは出ないと誓えるよ」
と真顔で返される。
ちょっ、頼綱っ! 小野田さんの前でっ!
「きゃ〜。ごちそうさまですっ」
頼綱がそう宣言したと同時、当然のように小野田さんに、思いっきり笑われてしまって、私はすごく恥ずかしくなる。
「私、席外してますねっ」
ニヤリ顔とサムズアップを残して個室を去っていく小野田さんを目で追って、
「頼綱のバカっ」
睨むように彼を見詰めたら、「本当のことだから別に構わないだろう?」とか。
子供が産まれてもそう言うところ、本当にブレないですねっ。
「でもね、花々里。この子は俺たちにとって、間違いなく鎹だから」
言われて、もう一方の候補だった「膳」よりも、やっぱりこの子には私たち家族の間を繋ぐ「縁志」という名前がぴったりだったよねと再認識させられる。
「膳、も俺たちの子供らしくて悪くはなかったんだけどね」
頼綱にふと言われて、「でもそれ、お膳の膳でしょう?」と言いながら、私は頼綱がその名を候補にあげた時の言い分を思い出した。
――膳って名前にはね、一生食べ物に困らないように、っていう願いが込められているんだ。俺と花々里の子の名前として、結構しっくりくると思うんだけどどうかな?
結局いくつもあげた候補の中かから、縁志と一緒に膳を残してしまった時点で、私も同じように思ってたってことなんだけど。
やっぱり「縁」を彷彿とさせる「縁志」の方が、よりしっくりくるなって思ったの。
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