神隠しと略取 1

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「とにかく、私たちの人手も使って、もう一度よく探してみましょう。お手伝いいたします」  古武住職は、そう言うと大声で寺の関係者たちを呼んだ。住職のもとに集まった3名の関係者に素早く支持を出すと、住職はさらなる大声で、とある女性の名前を叫んだ。  住職に名前を呼ばれた女性は、想像以上に若い――というよりも少女といった方がしっくりとくる女性だった。彼女は、まだ十代後半とおぼしき美しい少女だった。少女はその化粧っけのない整った顔を古武住職に向けて、少しご機嫌斜めな様子で言った。 「住職さま、どうしました? あんまり大きな声で呼ぶものだから、みなさん驚いていますよ。それに私、……今日は、まったりと華々を眺めながら本でも読むつもりでお邪魔しているんですから、できればそっとしておいてほしいです……」  少し丸顔で、目鼻立ちの整った少女は、その魅力的な大きな瞳を住職に向けた。
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