神隠しと略取 3

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神隠しと略取 3

 薄暗い部屋のなかに3人の女がいた。 そこは20畳ほどの大きさの洋室で、天井からは豪奢なシャンデリアが吊るされていた。部屋の中央には、大きなガラスを乗せたリビングテーブルと総皮張りの黒いソファが4つ置かれている。シャンデリアの灯りは点いておらず、テーブルの上に置かれた白い蝋燭だけが、薄ぼんやりと辺りを照らしていた。 「亜由美さん、ではその高山という男が、叶夢様に危害を加えようとしているのですね?」  横井麻美(よこいあさみ)がそう呟いた。 「そうなのです。……高山の狂気のきっかけは実に単純なものでした。高山が一方的に恋愛感情を抱いていた佳代子とかいう女性が叶夢様に恋心を抱いてしまいましたの。まあ、仕方がないですわね。だってあの通り、叶夢様は完璧なお方ですもの……。もちろん、私たちの叶夢様はそんな女を歯牙にもかけなかったことは云うまでもありません。ところが佳代子は錯乱して高山に嘘八百を吹き込んだのです。叶夢様に遊ばれただの、騙されただの、下品極まりない罵詈雑言をわめき散らしたようなのです。本当に最低かつ低能な女だったようです」  亜由美と呼ばれた眼鏡の女性は静かにそう応えた。まるで化粧っけがなく、長い黒髪をポニーテールにしている若い女だった。しかし、彼女の凛とした涼しげな容貌は清潔感に溢れている。度の強そうな黒縁の地味な眼鏡を外し、髪形を整えれば、さぞかし綺麗になるに違いない。誠実そうな、その立ち振る舞いは、ひとびとに好印象を与えることだろう。
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