忠告

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忠告

 昼休み、キノコ頭がなにやら文句を言ってくる。  朝の生徒会室への訪問が気に入らないらしい。  なにかあるなら、まずクラス委員長である自分を通せということらしい。  面倒臭いので解ったと返事はしておいたが、そんな事俺は知ったことではない。 「ひとつ言っておくけど会長はね、この学校に毎年多額の寄付をしている企業の御曹司なんだ。決して粗相(そそう)をしてはいけない。君の不謹慎な行動で僕達、この学校の生徒全員が迷惑を被るかもしれないんだ!」そう言うとキノコ頭は教室を出ていった。  昼休みも生徒会の活動ということか。 「ああ、ウザい奴だな」独り言を言ってしまった。 「三国君、気にしないでいいよ、アイツ少し頭がおかしいから」クラスメイトが声をかけてくる。 「ああ、服部……だったよな」一応、皆の名前を覚える努力をした。 「ありがとう、名前を覚えてくれてるんだね」少し嬉しそうに服部は微笑んだ。 「あのキノコ頭、なんだかムカつくわ」俺は思いの丈を吐いた。 「はははは、キノコ頭はいいね。皆、気持ちは同じだよ」服部は俺の肩をパチンと叩いた。 「痛い!」思いの外痛かった。 「悪い、悪い」全く悪びれた様子はないようだ。ちょっとガサツではあるが気のいい男のようである。 「でも、あながち庄内の言うことは嘘ばかりでもないんだ。この学校は生徒会の権限が結構大きくて、あの蛍池会長に睨まれると、この学校では生きていけないと言われているんだ」服部は腕組みをしながら自分を納得させるかのように、ウンウンと頷いていた。 「あの逆瀬川って副会長はどうなんだ?」俺はさりげなく聞いてみた。 「ああ、お嬢様だよ。学年は俺達と同じだけど、授業以外は、ほとんど生徒会室に入り浸ってるようだな。ツンとしているけど、あのルックスのせいで男子生徒の人気は抜群だよ。でもアタックして撃沈した奴が大半だけど......、気でもあるのか?」もしかして、服部も告白した一人なのかと思った。 「いや、別に......」俺は誤魔化すように軽く首を横に振った。    窓際の席に目をやる。今日は、そこに神崎の姿は無かった。 「そういえば、あの神崎って奴のことだけど……」神崎の名前を出した瞬間、服部の顔色が激変する。 「えっ……、神崎って……」先程のまでの陽気な雰囲気が嘘のようだった。なにか触れてはいけない話題にでも触れてしまったかのような雰囲気であった。 「お、おい」近くにいた他の生徒が駆け寄ってきて、服部に声をかける。 「あ、ああ……」服部は少し動揺したような顔で、俺の元から離れようとする。 「おい服部、どうしたんだ?」服部の態度の激変に俺は戸惑う。 「三国君、一応忠告しておくけど、この学校の中で神崎君の事は話さないほうがいいよ……」その言葉を残すと、クラスの隅のグループに合流していった。  神崎の素行がよほど悪いのか、皆、クラスの生徒達はアイツの事には関わらないようにしているらしい。  それほど悪い奴には見えないのだが、何か過去にあったのかと詮索(せんさく)するが、それは俺には解る筈もなかった。
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