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中学生になり、高校を卒業し、大学に入学する頃には、僕の身長はすっかりハルさんを追い越していた。
チビだった僕の成長を、ハルさんは誰よりも喜んでくれた。
けれど、僕がどんなに成長しても、ハルさんはどんどん先に行ってしまう。
5歳という歳の差は、狭いようでいて長かった。
「でね、その先輩がすっごくカッコイイの!あ、こーちゃんも好きな子とかいる?」
いますよ。でも内緒です。
「こーちゃん。私ね、先輩とお付き合いすることになったんだ」
良かったですね。寂しいと言うのは、わがままかな。
「あ、紹介しますね先輩。この子がこーちゃん。お隣さんなんですけど、小さい頃から一緒で姉弟みたいに仲良しなんです。ね、こーちゃん」
……えぇ、そうですね。
「えへへ、見て見てこーちゃん。付き合って3年目記念に彼から貰ったの。意外と続いてるでしょ?」
ハルさんみたいな人が彼女だったら、一生そばに居たいと思いますよ。
「あのね、こーちゃん。私、結婚するかもしれない」
…………おめでとうございます。
結婚式には呼んでくださいね。ハルさんのウエディングドレス姿が楽しみです。
そうやって、ハルさんがどんどん手の届かない存在になっていくのを、僕は“弟分”として見ていることしか出来なかった。
自分の気持ちを、言葉を、嘘で塗り固めて。僕はハルさんの良き弟を演じた。
でも、それで良いのだと思っていた。
ハルさんが幸せになれるなら、ハルさんが笑っていられるのなら。この思いに嘘をついても、そばに居られるならそれで良いと。
そう、思っていたのに。
「こーちゃん……私、振られちゃったみたい」
涙目で微笑んだハルさんに、気付けば手を伸ばしていた。
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