第1話 僕、本のすき間からピンクの世界へ行ってしまう。

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 読んでいる途中でそれはどうなのか、と疑問に思うこともあれば、読み終わった後に、いや、それは……となって、まるで薬の副作用のように後々しばらくの間、僕を苦しめる。  合う人には合うようにできているのかもしれない。ただ、僕には効果がなかったように思う。ここに売られてきた本たちは実は、みんなそのような薬の要素を持っているのかもしれない。    ぼんやりとした気持ちで、オカルトの棚を始まりのところからじっくりと眺める。  オカルト的なもの、都市伝説だったり幽霊だったり、UMAだったり……本当にあるのかないのかわからない、でもあったらかなり面白いだろうこのジャンルは、小さいころから大好きだ。    だから……このオカルトとちゃんとジャンル分けされた棚を最初に見たときは、正直、驚きと喜びが入りまじり、こんな棚ができてしまっていいのかと勝手に興奮し、勝手に世の中を心配したものだった。    その時の感情がよみがえった僕。    時代が僕に追い付いてきたような気がして変に高揚する気持ちと、そんな気持ちになってしまったことが恥ずかしくて自分に嫌気がする気持ちと、なんだかややこしい、しょうもない気分の中で一冊の本に目が留まった。  
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