第1話 僕、本のすき間からピンクの世界へ行ってしまう。

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 “よいこの怪談全集:恐怖!前歯に青のり……8巻”これは明らかに児童書だった。  子供の頃にとても流行っていたシリーズで、僕も昔、学校の図書館だったり、一、二冊書店で親にねだって買ってもらった覚えがある。  懐かしさで胸がいっぱいになるが、どうしてこの棚にあるのだろうか。  本来なら絵本などが並んでいる棚の近く、児童書のコーナーにあるはずではないのだろうか。  自然と右手の人差し指が背表紙の上部、真ん中をひっかけ取り出し、表紙を見る。  しっかりとした本だった。装丁の黒のような深緑のような、なんとも言えない暗い色がオカルト感を強調しているようだが、絵柄がちょっと可愛らしい。当時はこの絵柄でも恐怖を感じたものだった。    試しに目次でも見てみようか……とめくろうとしたとき、中途半端に本の三分の一ページくらいの所が開いてしまった。  何か紙が挟まっている。  こういう中古の本では時々、メモのような紙が挟まっていることが稀にある。だが、なんとなくさわる気になれない僕はちらっと見て、もとの棚に戻した。  戻したが、はっとした。
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