第2話 僕、本のすき間からピンクの世界へ行ってしまう。(後編)

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第2話 僕、本のすき間からピンクの世界へ行ってしまう。(後編)

 次に気が付くとそこは、淡いピンク色の空間だった。  僕は頭を下にしながら、ふわふわ漂っている。  腕を動かしてみる。  右手にさっきの“よいこの怪談全集:恐怖!前歯に青のり……8巻”をしっかりと持っていた。  左手で背中をさわり確認すると、ちゃんとリュックサックを背負っていた。    あぁ、荷物は無事だな、よかった……と安心する。  すると、だんだんおなかが空いてきた。ちょっとだった感覚は大きくなり、やがてものすごい空腹感が襲ってきた。    たまらず、周りをキョロキョロする。そして気づいた。  たくさんのお菓子の集団が、まるで水族館のイワシのようにこの空間を泳ぎ回っていることに。  大福やせんべい、羊かん、まんじゅう、団子などなど……それぞれの種類が、それぞれの群れを成して泳いでいるではないか……    そうか、僕も泳げばいいんだな。  そう思うとさっそく、僕はバタ足をしてみる。ちなみに腕は平泳ぎスタイルだ。  今までの人生で泳げたことは全くない。  しかし、運がいいのかバタバタもがいていると、いい具合に、あんまんの群れの最後尾に着くことができた。    よし、いけるぞ……!!  と、ここ最近で一番強気になったところで、他のあんまんよりもどんくさそうで、ひときわ大きく、子どもの頭ほどありそうな大物に、思い切り左手を伸ばし、つかもうとした。  ところが、あんまんは先ほどのどんくさい泳ぎ方は演技だったのよと言わんばかりに、軽い身のこなしでスルンとかわした。    そして、まるで振り返ったかのようにクルリと回ると、そこにはやわらかそうでいて温かみのある、ツヤツヤでぷっくりとした美しい唇があった。  と、ここでなぜか急に意識がはっきりとしてきた。
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