color.1《突然の告白》

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「適当に座っといてくれ」 龍は、リビングのカーテンを閉めつつ二人にそう声をかけた。街を一望できる壁一面がガラス張りのその窓に、異様に黒田が怖がった為渋々カーテンを閉める事にしたのだ。景色、綺麗なのに……。残念。 「というか、本当に広いっスね、この部屋。センスもいいし」 壁際に置かれた二人がけのソファの隅っこに、モルモットのように丸くなった黒田は、リビングを見回した。青と白を基調とした、シンプル且つ温かみのある部屋__。と、龍の姉は言っていた。 龍が引っ越してきた時、既に一通りの家具は揃っていて、彼が自分で決めたものと言えば棚の配置とどの部屋を主寝室にするか……という事ぐらいだ。 3LDKで、こだわりの強い姉が選びに選び抜いたアイランドキッチン。大抵の場合料理を作らされるのは龍なのに、彼女の好みで決められた。 「__ほら、適当に選んで」 龍は冷蔵庫からジュースとアイスティーを、食器棚からコップを3つ取り出して、リビングのローテーブルに置いた。 再び目を剥いたのは黒田ではなく燐の方だった。 「……えっ!?ちょ、龍、もっと安物の食器ないの!?」 ガサツに置かれたコップを心配するように擦りながら、燐は慌てて龍にそう聞く。龍はやや首を傾げつつ、燐の凄まじい迫力に気圧されて食器棚まで戻ると、しげしげと眺めた。 「ムー〇ンなら……」 「ブランド名入ってるってば。__もういい、うう……絶対割らないようにしないと」 (そんなに高いのか、これ?) しげしげとコップを眺める。姉が勝手に選んだ物だから、龍にはどこのブランドとかいくらするかとかは全く分からない。黒田も流石にコップの値段は知らないようで、ブランドの名前を燐に言われてもピンとは来ていないようだった。 「……ちなみにだけど、黒田の使ってるそれはキミのバイト代1ヶ月分と同じだよ」 ブフッとジュースを吐いた黒田。液体がテーブルに飛び散り、思わず龍は半眼で彼を睨みつけた。 「汚ぇな」 「……うっ、ごめんなさい龍さん!」 慌ててテーブルを拭きながら、黒田は落ち込んだようにまた表情を暗くした。__そろそろ、話を聞いてもいいだろうかと龍と燐は目配せする。 「……ねえ、黒田。話してごらん?ボクもリュウも、バカにしたりしないから」 パフパフとクマのぬいぐるみを叩きながら、のほほんと__だが、鋭い視線で、燐は黒田に語りかけた。 黒田はテーブルを拭く手を止めると、ぎゅっとそれを力強く握りしめる。 その唇が意を決したように動き出し、ぽつりぽつりと話を始めた。 「んー……まあ、簡単に言うとなんスけど。俺、懐かれてたみたいで」 「えっと……生徒会長に、か?」 話を思い出しながらそう聞いた龍の方をちらりと見ながら、黒田はこくりと頷く。泣きぼくろが本当に泣いているかのように目が細められ、今にも泣き出してしまう寸前で彼は口元を手で覆いながら、話を続けた。 「昔から、断れない性分のせいで、その……まあ生徒会の仕事を手伝ってたんです。一年の時から。去年はまだ良かった。今はもう卒業しちまった元3年生の生徒会長が本当に良くしてくれて。俺が一年間ちゃんとあの高校に通えたのも、その人のお陰なんですけど」 その後の話が女並に長いわ逸れるわで日が暮れそうだったので、割愛。要約すると、 「__次の生徒会長が年下になった挙句、黒田を副会長に指名しただあ?」 ゴミを見るような目をしながら、素っ頓狂な声を上げた龍。燐はあちゃ~とでも言うように頭を押さえている。
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