color.1《突然の告白》

14/17
前へ
/41ページ
次へ
一気に興味を失って立ち上がった龍の脚に、縋り付くように黒田は腕を絡めながら、 「……ううっ、アイツ本当に怖いんですよ!馬鹿力だし、喧嘩も強いし!」 そう叫んで、震える。天敵に追い詰められたウサギか何かか?と冷たい視線で龍が見下すと、黒田はむうっと口を尖らせた。 「どうせ、俺は龍さんや燐さんに比べたらウサギのフン並に弱いですけど、でも、これでもナンバー3だったんですよ!?」 「中学時代はでしょ?てか、ボクはともかく、リュウは比べる対象にしちゃダメでしょ。化け物なんだから……」 平然とそう言いのけた燐は、ヨシヨシと黒田の頭を撫でる。化け物に勝てないのはウサギさんだから仕方がないでちゅね~と、馬鹿にしているのか慰めているのか……。 「じゃあ、何でその生徒会長?が、お前を指名してきたんだよ」 ガシガシと頭を掻きながら、龍はその場に胡座をかいた。黒田がいつまでも泣きついてくるのはうざったらしかったので、とっとと話を聞いてしまおうと思ったのだ。 「それが分からないんスよ!ほら、ウチの高校って寮があるから、俺今年からそこの管理もやる事になってたんです。で、新入生が来たから案内してくれって言われて……。何と言うか、その……」 まごまごともたつく黒田に、燐が助け舟を出した。 「んー、察するに、その中に理事長の息子でもいて、彼が入学と同時に生徒会長になった。んで、黒田の事好き好きーってうるさい挙句、副会長に指名してきたって事ね」 「えっ、何で燐さん分かるんすか?」 「経験の差」 へええ……と関心する黒田。燐はどこか遠い目をした後、何故か手に持っていたクマのぬいぐるみをぎゅーっと左右に引っ張った。やめろ、ちぎれる。茶色の毛並みで埋め尽くされた顔が、悲しそうに歪んでいる。 「……で、お前が相談するって事はどうしたらいいか分からねぇからなのか?」 燐からクマのぬいぐるみを取り上げ、ソファへ退避させながら黒田にそう聞いた。彼は、神妙な顔をしながら頷く。 「……はい。昨日、生徒会の仕事をしていて二人きりの時に、突然。『僕と付き合え』って。__いつもみたいに、冗談だろ?って言ったら、本気だって……」 「断ればいいんじゃないの?黒田が嫌ならさ」 手持ち無沙汰になった燐が手を弄ぶ。黒田はその言葉に、微妙な反応を返した。迷うような表情。人に傷付かれるのが怖いから、いつも頼み事を断れない。だから、今回もそうなのかと龍は勝手に思ったが、 「__まぁ、ゆっくり考えればいいんじゃない?ボク、バイトあるからそろそろ帰るね」 「あれ?お前バイトするって言ってたっけ?」 おもむろに立ち上がった燐を見上げて、龍が首を傾げる。燐は、面倒くさそうに両手を上げると、 「うん、まあねー?ちょっと遊ぶ金欲しさに、ね」 にこりと笑う。声のトーンが僅かに下がった気がしたので、これ以上は聞かない方が良いだろうと、龍と黒田は燐を玄関まで見送った。 「あ、そうだ」 去り際、燐が思い出したように口を動かした。くるりとこちらを振り向くと、黒田へにっこりと笑みを向ける。 「?なんスか、燐さん」 「__多分、さっきのファミレスにその生徒会長?の人居たと思うよ」 「…………!!」 爆弾発言。黒田の体だけ時が止まったように固まるのを後目に、燐はじゃあねー、と手を振って扉の向こうに消えてしまった。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

532人が本棚に入れています
本棚に追加