color.3《龍と燐》

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髪に触れる、優しい手。女みたいに細っこくて、でもそこから繰り出される拳はえげつないほどに力強い。 「__あ、起きた?」 朝日に照らされて、彼の色素の薄い瞳が鮮やかに輝く。龍は、机から顔を上げると寝ぼけ眼を擦った。 「……燐、あん時ってさ、本気だった?」 燐は、おどけたように笑った。龍の正面に、机に寄りかかるようにしてしゃがんだ燐は、少しだけ悲しい顔をしていた。 何が、を言わなくても分かったらしい。 「……どうだと思う?リュウとボクのケンカは、あれが最初で最後だけど」 「お前が本気だったんなら、俺は絶対負けてた」 「リュウは強いよ」 燐は、ふにゃふにゃと笑った。 「お前はもっと強い。違うか?」 責めるように、燐を見た。分からないとでも思っているんだろうか。__上手く隠しているつもりなんだろうか。……何で、そんなに辛そうな顔をするんだ? 「正直に答えろ。……お前は俺の事、どう思ってんの?」 燐は、何か話そうとして口を開きかけ、すぐに閉じた。困ったように、誤魔化すように、穏やかな声で龍に告げた。 「好き。もちろん、友達としてね?リュウもそうっしょ?」 「俺は__」 「そうなんだよ。それでいいんだよ、リュウ」 何で。じゃあ、何でそんなに苦しげな表情をするんだ。龍一人が悩んだままで、バカみたいじゃないか。 「……お前、今日昼休みに話あるって書いただろ」 龍は、燐の瞳を睨みつけながら聞いた。 「__うん」 「恨みっこなしのタイマンだ。俺が勝ったら、お前に聞きたい事がある」 「ボクが勝ったら?」 燐の声は、今までにないくらい冷たかった。 「何でも言う事ひとつ聞く」 龍が早口で告げると、燐は諦めたように苦笑しつつ、ポンポンと龍の頭を叩いた。
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