color.3《龍と燐》

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* 屋上と言えば、中学時代はたまり場になっていた。危険だとか何だとか色んな理由で鍵をかけて管理されていたのだが、所詮は簡易的なものだ。誰かがピッキングしたようで、教師に直接見られない限りは自由に出入りできたのだ。 清華高校はさすがにそんな不謹慎な事は無かったようで、燐が職員室に行って借りてきてくれた。ちなみに、どうやって借りられたのかを聞くと、 「秘密」 と、少し不機嫌な声で返ってきたのでそれ以上は深入りしない事にした。 昼休みの賑やかな教室の横を通り過ぎて、連れ立って屋上へと向かう。借りた鍵で扉を開けると、心地よいそよ風が身を包んだ。 「うわ、懐かしすぎ、この感覚」 燐は軽やかな足取りで落下防止用のフェンスに近づくと、下を覗き込んだ。清華高校では学校の造りの問題でグラウンドは見えないけれど、中学の時は屋上から丁度サッカーで遊ぶ他の生徒が見えていた。燐と黒田とよく、勝敗をかけては昼飯を奢ったり奢られたりしてたな、と今更のように思い出した。 「ルール違反無しの、何でもありでおっけー?」 「ああ」 ポキポキと指の骨を鳴らしながら、燐はゆっくりと振り向いて龍と相対した。二人の視線が絡み合った瞬間、それまでの穏やかな空気が一転して、殺伐としたものに変わる。龍は堂々と殺気を飛ばすが、燐は何を考えているのか分からないままだ。 「何考えてんだ?」 「そーねー、ボクが勝ったらリュウはナニしてくれんのかなって?」 「……はっ、負けねぇよ」 即答すると、燐はケラケラと笑う。ひとしきり笑い声をあげた後、すうっと大きく深呼吸をした。 「__さ、始めよっか」
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