color.1《突然の告白》

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「は……?何だよ、それ」 (……?俺を知っている?何の事だ) 「……知らねぇ。俺は、お前なんか、知らない……」 __ズキン。 「大体、何だよ、男が男に愛してるだって……?はっ、気持ちわりぃ」 __ズキン。 「散々女子に囲まれて、楽しそうに笑ってたくせに」 __ズキン……。 ……違う、そんな事を言いたかった訳じゃない。違う?何が、違う?気持ち悪いなんて、思わなかった。なのに、思ってもいない事が意思に反して口から溢れ出る。頭が、胸が痛い。苦しい。 思わず、水城から目を逸らした。その顔はきっと、傷付いてるだろうから。いたたまれなくて、逃げるように手を振り払おうとしたけれど。 「……そうか」 水城は、それだけを呟いた。そして__ 「__っ!おい、離せっ」 再び、強引に龍を引っ張って歩き出す。 「思い出せないんなら、思い出させてやるよ」 振り向かない、その冷たい背中の向こうで水城はどんな顔をしているだろう。龍は、高鳴る鼓動と痛みに耐えながら、ただなすがままに、歩き続ける事しかできなかった。 * 「__入れ」 冷たい声と共に、無理やり扉の先へ押し込まれた。「数学準備室」そう書かれたプレートが、扉の上に貼られているのが見えた。 「っ!?おい!」 中は丁寧に整理整頓された机と椅子、一人用のソファが、二つ隅に置いてあるさほど広くない部屋だった。そして、水城は逃げようとする龍の体を、ソファへ押し倒してしまう。 「__離せ」 低い声で、龍が唸る。誰もが恐怖するその声にも、水城は一切動じなかった。 「……駄目だ。逃がさない」 大胆不敵な微笑みを浮かべ、水城はするりとネクタイを外した。ふわり、とまた、香水の香りが広がる。 「__お前が俺を知らないなら、思い出させてやるよ」 舌舐めずりをしながら、水城は龍の体をソファに押し込み、股間を膝でぐりぐりと押してくる。__妖艶な仕草で、瞬く間に龍の両腕を、ネクタイで縛ってしまう。 「痛っ……」 隙間を作って逃れようとしたが、バレた。がっちりと、痛みが走るくらい強く結ばれてしまえば、もう逃れる事はできない。 「んあっ!?」 水城の長い指が、制服越しに龍のソレに触れた。危機感に反して、立派に勃起したソレは、彼に触れられる事に素直に反応してしまう。 「何すんだてめぇっ!」 「__てめえ、じゃないだろ」 水城は、残酷なまでに冷たい微笑みで龍の頬を撫でた。ゾワゾワとした寒気と同時に、何故か背筋には快感が走る。もっと、もっと触れて欲しい。龍の冷えきった体に、その熱いほどの手が心地よい。 「愛してる。……愛してる、龍。また会えて嬉しいよ」 水城の手が、体が、龍を興奮させた。甘い囁きは直接耳に送り込まれ、その度にピクピクと体が反応する。 「いや、だ……。何で……」 龍は、もう体に力を入れる事さえできなかった。__水城が彼の制服を剥いでも、いやいやと首を振りながらも、それしかしない。 「龍の乳首、ビンビンだね」 全裸になった龍の体を、水城の視線が舐め回すように眺めてくる。ハズカシイ、キモチワルイ、でも__。 「ほら、こんなに勃起して……」 ピンッと、ソレを弾かれれば甘い痺れが全身を震わせる。意図せず背中が反り、自分の物とは思えない嬌声が溢れ出てしまう。 「あんっ!……やぁっ……水城、せんせ」 「可愛いよ__龍。俺に任せて」 チュッとリップ音をたてながら、水城はその滑らかな唇で、龍の頬にキスを落とす。 「……物欲しそうに、ヒクヒクしてる。__知ってるか?男性同士はな、ココを使うんだよ」 水城がゆっくりと龍の上にのしかかり、彼の穴をトンと叩いた。本来ソコは、排泄する為のもの。__龍は、恐怖心に囚われた。 「……やだ、やだやだやだっ!怖、いやめて、助けてっ!そお、兄」 「__っ、覚えてるじゃねえか」 (っ?俺、今そお兄って……。?) おかしい。何か、大事な事を忘れてる。 __ズキン。……ああ、今度は頭まで痛くなってきた。今日は、本当に最低な日だと改めて龍は思った。 「__そお兄、何で俺を見捨てたの……」 意識が、徐々に薄くなっていく。なのに、頭病みはその痛みを増した。胸が苦しい。何かが溢れだしてしまいそうだ。 「う!龍!?」 (あ、れ……水城先生?) 必死で、誰かが呼ぶ声が聞こえるけど。意識は、微睡みの中へと落ちていく。ふわふわとした感覚に包まれて、誰かのその手が心地好くて。 寒い。けど、あったかい。意識を手放すその瞬間、水城先生の顔がクシャクシャに歪んでいるのが見えた気がした。 (俺を見てくれる人なんて__いるはずないのに) 遠くで、の声がして。 けれど龍は、再び目を開く事はしなかった。
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