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棘と蜜
わからない。好きだというなら、どうして浮気なんてするのだろうか。
もう何度、別れる別れないと議論したと思う?
そう尋ねたいのを堪えて、莉乃はただ優介のぬくもりに目を閉じた。
もうすぐ陽が沈む。今日の終わりが近付いている。
自分と優介の関係も一緒に過ごす時間もきっと、今日と共に過ぎ去るのだと思っていた。
だけど、まだ優介は繋ぎとめようとしている。
どうして?なにがあなたを突き動かすの?
もうやめようよ。お互い、傷だらけじゃない。
言いたいことは山ほどあるのに、何故だか声がでない。
冬の陽だまりのように、優介から離れられない。
今日こそ、別れを告げなくちゃいけないのに―…
莉乃は唇を噛みしめた。
上空から薄闇に染まりはじめた空。山と山の間に堕ちていく太陽。
もうすぐ、空が赤く染まる。
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