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 大したことではない。  ゼミの仲間で食事に行った。  始めは和やかに話していたのに、途中から欠席した人の悪口になった。私も休めばこんな風に言われるのかな。  見えないもの、聞こえないものは、気にかけなくていい。  時間とお金を無駄にしている。  出席しても浮かないように合わせて、何て相槌打ったらいい? って、気を遣ってばかりだ。結局、帰ったらどっと疲れて、後悔することになる。  それでも繋がっていたい。大学で孤独になるのは、嫌だった。  いつしか、心から笑ったりすることを忘れていた気がする。  そんなことを今ここで言うつもりはないけれど。  そういう想いがよぎり、やっと浮かんだ笑顔は、曖昧にぼやけていった。  その時、くるぶしの辺りをするりと撫でるものがあった。 「ひゃん」  思わず変な声が出る。黒猫だった。しっぽで撫でられた。
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