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「近いうちに連絡するから、また来てね」
「はい。必ず来ます。今日はお世話になりました」
摩耶子さんに見送られて、外に出る。
雨は止んでいた。
既に日は沈み、西の空には赤い雲だけが残っていた。
来た時のように、飛び石に気を付けて歩き、門を出る。
もう一度振り返り、確認する。家は、こじんまりとした古い日本家屋だ。数寄屋造りと言うのかな。門柱には「河野」と表札が掛かっている。
「何をしげしげと眺めてる」
「次に来る時、間違えないようにって、確認です。ああ……でもじろじろと見られたら、嫌ですよね」
「いや、別にいいけど」
それから、こちらも確認しておかないと。
「あの、摩耶子さんに誘われましたけど、また来ていいですか?」
「どうぞ。けっこう料理は上手いから、期待していいよ」
「そうなんですか。楽しみにしてます」
駅までは、何分ぐらいだろう。
町の様子も観察しながら歩く。
「この道に入ってくれば、わかるから。ちょっと斜めになってるから、間違えないで」
朔也さんは時折、ポイントを教えてくれる。
始め、送ってもらうのを断ったのは、よく知らない男の人と2人で歩いたら、気まずいだろうと思ったからだ。けれど、なぜか気にならなかった。
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