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電話番号は? メール? アドレス交換?
朔也ー! これどうやってするんだっけ?
摩耶子さんが呼ぶと、奥から「何騒いでる」と言いながら、朔也さんが出てきた。少し不機嫌そうな顔だ。摩耶子さんは気にする風でもなく、説明して携帯電話を渡している。
朔也さんは座って、私の携帯と合わせてささっと操作すると、摩耶子さんに返す。
「いい加減、覚えて」
「いいじゃないの。わからなくても、こうしてやってもらえるし」
摩耶子さんは、ねーっと、小首を傾げて私に同意を求める。
「あ、あの、はい」
「ほら、困ってるだろ」
「だあって、それを覚えてる間に、もっとしたいことあるもん」
私は驚いた。ほほをふくらませた摩耶子さんは、駄々っ子みたいだ。
「あ、摩耶子さんは大人の顔してるけど、違うからね」
「あー、朔也だってそうでしょ。いまだにピーマン食べられないじゃないの」
「はあ? それ、次元が低過ぎだろ」
今度は朔也さんの方が、ムキになっている。
こんな風に言い合いながら、毎日過ごしているのだろうか。
私は笑いがこみ上げてきた。
気が付くと、摩耶子さんが私を見て、微笑んでいる。
「いのりちゃん、やっと笑った。笑った方がいいわ」
そうか。
近頃の私は、感情の起伏が無かったかもしれない。
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