<序文>この手記を書く理由

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<序文>この手記を書く理由

 今日は記念すべき日だ。  私がこのように自ら語り、記す自由があるとは!   私はセルリウス・フェニックス・ブルー。これは通称だ。  三つ揃えのゼニアのスーツに、アッシュブロンドの髪。ブルーグリーンの瞳を持つ、アメリカ人の50代の男性だ。  表の仕事は文学の大学教授。裏社会では世界的ネットワークを持つ犯罪組織の幹部という立場にある。  私の秘密──内なる秘密を明かす日が来るとは、夢にも思わなかった。時代は変わるものだ。そして私も変わったのだろう。  米国ニューポートの邸宅で過ごしていた少年時代に、私に自由はあっただろうか。否。  このノートは私の最もプライベートな手記だ。私はこれを息子アレクのために書いている。のちのち、彼にはこのノートを渡そうと思っている。そのことを想定して書いたもので、他人に読ませるつもりはない。  もし興味にかられた誰か、例えばあなたがこの先を読んだとしても、決して公表はしないで欲しい。この禁を破った者は制裁を下し、社会的に抹殺する。秘密は守ってもらいたい。
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