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イザベラの側にいると、温かな空気に全身が包まれる感じがする。
初めて知る人のぬくもり。初めての女性の身体。
蜜月だった。
あんな幸福は二度とはないだろう。
私にとって、このアフリカの狂気の都は癒しの場所、別天地だった。私は奴隷である幸せに心から安堵していた。
全裸に首輪をつけられ、床に丸くなって、女主人の足元で眠ること、心から服従することが、こんなにも至福であることを知らなかった。
ありのままの私を受け入れてもらうことに、自分が飢えていたなんて知らなかった。イザベラに会うまでは。
彼女は私の憧れであり、崇拝対象であり、女神だった。
鞭を持つ彼女はまさに女王であり、女帝であった。
彼女のことを書くには、どれだけ語りつくしても足りない。
「震えるコマドリ」とイザベラは私を評した。繊細で、感じやすくて、孤独な男だと。
私の不安定な心も、さまよえる魂も、彼女は愛してくれた。
時折加えられる折檻も、苦辱も、彼女のためなら私は嬉しかった。
だがしかし、やはり私でも戸惑うような命令も時にはあった。
マゾ願望を持つ富豪のための「被虐の館」で、個室で彼女の調教を受けていたときだ。
「今日はお披露目をするわよ。この館の外に出るの」
黒のロングワンピースに、黒い編み上げブーツを履いたイザベラが、私の首輪の鎖を引いた。
私は言われたことにめまいがするほど驚いた。
私は裸だ。身に着けているのは首輪だけだ。身体のあちこちに鞭の跡もついている。完全な奴隷だ。
「行き場所は黄金宮よ」
黄金宮! 会員専用のホテルじゃないか。
まずい、顔がばれてしまう。社交界での知り合いもいるんだろうか? そんなことには耐えられない。
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