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「わ、私は」
しどろもどろに言いつないだ時。イザベラが笑った。
「私の知り合いを幾人か呼んだわ。お披露目しましょうね」
それを聞いてまた身体が震える。戸惑いと嫌悪。
私は他の主人達が怖い。根っからの人嫌いな上に、警戒心も羞恥心も強い。
イザベラ以外には心を開いていないのだ。誰かに触れられるなんて、怖くてたまらない。
そんな私を見て、イザベラは微笑む。絶対的な女主人の顔で。
「どうしてあなたがそんなに傷つきながら生きてるのか、私は知ってるわ。あなたを刺す棘が、心に刺さって血を流し続けている。治らない傷となって膿んでいる」
首輪に続く鎖が彼女の手で引っ張られた。
鎖が絡み取られる。
「でもあなたは棘を抜くよりも、血だらけのまま死にたいのよ。自分の無実を証明したいの。でも私はそんなことはさせないわ。あなたは恥をさらして鳴けばいい」
彼女の足元で、這いつくばりながら私は懇願する。どうかどこにも連れてゆかないで欲しいと。
イザベラ、私に破滅を与えてくれるのは君だけだ。
私にとっての世界は君だけなんだ!
行き先は豪華なホテルの中の、小規模なクラブになっていた。静かなバーのカウンターやテーブルで、スーツ姿の会員の富豪達が酒を飲んでいる。私はおどおどしながら首輪に鎖をつけられて連れていかれた。
イザベラが部屋に入ると、すぐに数人の男達が挨拶に集まり、床を四足で歩く私を見た。彼女を中心に、人の輪が出来た。しばらく談笑した後、イザベラが私のことを話した。
「一通りの躾はしたわ。でもこの子、男と寝るのは初めてなのよ。誰かに仕上げをお願いしたいの」
それを聞いて男たちが色めき立った。とたんに私に視線が注がれて、私は震えあがった。候補者が数人名乗りを上げる。私は口から心臓が飛び出そうな思いだった。
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