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カクテルのグラスを片手に持った青年が、笑みを浮かべて私を見下ろす。
「まだ初物ってわけか。怯えてる。可愛いな」
もう一人の太った中年の男が、好色な視線で私を見て、イザベラに声をかけた。
「こいつはオークションにいつかける?」
イザベラが答えた。
「私の個人的な奴隷だから販売はしないの。でも、いくら私にも出来ないこともあるわ。男にしかできないことが。だからここに連れて来たのよ」
その意味深な言葉に、また男たちの間で笑いが起きる。男たちがちらちらと、イザベラを見て、私を見ている。
私の全身をなめ回すように見る目つきが怖い。
だんだ顔が赤面してくるのが分かる。しだいに手足に嫌な汗をかいてきた。
学生の時に、集団でいじめられた記憶も思い出す。私は小柄なやせっぽちで、女の子みたいな外見だとからかわれていた。運動も出来ずに、どんくさくて。
同性のクラスのボスからラブレターが届き、嫌がらせだろうと無視したら、その日から彼主体のいじめが始まってしまったのだ。
その時のいじめと似ている。嫌な記憶。
私に向かって一歩を踏み出した会員がいて、怖くて思わず後ずさった。
私の様子に、また周囲で笑いが起きる。背後を振り返ったら、男たちが複数人が囲んでいた。私はおろおろと逃げ道を探したが、ありそうにない。
そしてイザベラも輪から離れた。
バーカウンターから声だけが聞こえる。
「希望者は何人でもいいわ。ここでこの子を抱いてやって」
こんな多人数を相手に? この場で?
私は一気に青ざめてしまった。近くにいた男の一人が手を伸ばして私の肌に触れようとし、私が顔を背けて背後に飛びずさったところ、別の男に抱え込まれてしまった。
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