250人が本棚に入れています
本棚に追加―――――
どうして、時間が過ぎるのはこんなにも早いんだろう。
モヤモヤとした気持ちを抱えながらも、やっぱり白石くんと過ごす時間は私にとって幸せなひとときだった。
茜色に染まる西空に、ほんのり色づいた雲がゆっくりと表情を変えていく。
黄昏時が近づくにつれて、海は段々とその色を濃くしていき、昼間の煌めきはすっかり顔を隠してしまった。
私は、白石くんの半歩後ろを歩きながら、頼りなく揺らめく暗い水面をぼんやりと眺めていた。
……もうすぐ、終わってしまう。
この、本番じゃない“デート”も、
半年間密かに思い続けた私の片想いも。
白石くんは今夜バイトのシフトに入ってると言っていたから、この桟橋を渡りきったら、お互い別々の駅へと向かうことになるだろう。
明日は休みだ。
帰ったら、思いきり泣こう。
二日間顔を合わせなければ、諦めがつく。
…………そんなわけ、ないけれど。
無理矢理にでもそう思い込まなければ、このまま同じバイトを続けていける気がしなかった。
「……さん……橘さん」
ハッと気づくと、前を歩いていたはずの白石くんがこちらに向き直っていて、私は弾かれたように顔を上げた。
「……っあ、ごめん……呼んでた?」
「はい。……あの」
“そろそろ、帰りましょうか”
きっと、白石くんはそう切り出そうとしてる。
―――嫌だ。やっぱり、まだ終わりたくない……
「ねぇっ、見て見て!空が綺麗だよ!
ほら、あそことかグラデーションになって」
震える声でそう言い掛けたところで、
私は、あとに続く言葉を失ってしまった。

最初のコメントを投稿しよう!