抗えない想いを胸に秘めたまま、おまえの傍にずっといたい

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 いつもは狙い澄ましたモノに向かって、スムーズに銛を放つのに、この間はそれをせず、肩に乗せた俺を小脇に抱えつつ、素早くしゃがみ込んだ。  いきなりの行動に驚いた俺が仰ぎ見ると、闇夜で明かりがないのにもかかわらず、ベニーの瞳は赤く光り輝いていた。宝石のきらめきを思わせるそれに、思わず見惚れてしまったのは内緒だ。 「あれれ、すみません。狙いが逸れてしまいました」  建物の影から出てきた青年が、手に持った弓矢を見せるなり、遠くに逃げる獲物に向かって矢を放った。ヒュンという空を切る音と同時に、狙われたモノが射られ、力なくどこかに落ちていった。 「ロレザス先生の銛、いいですね。僕のは拾いに行かなければならないので、アレを探すのに苦労しまくりなんですよ」 「失礼ですが、私が先に狙っていたものです。手を止めるために、わざとこの子に狙いを定めましたね?」  俺を抱くベニーの腕の力が、自然と込められる。 「大事な狩りにネコを連れ歩くなんて、信じられない行為でしたから。警告の意味を込めて狙ったまでです」  ベニーの正面に立った若い青年は、栗色の髪を風になびかせながら緑色の瞳で、俺たちをまじまじと見つめる。 「キース、いい加減にしなさいっ! またここでも問題を起こすわけ?」  青年が出てきた物陰とは反対側から現れたのは、長い黒髪を首元で束ねた妙齢の女性だった。青年の隣に並ぶなり、すぐ傍にある耳たぶを掴んでぐいっと引っ張る。 「貴女は、彼の見守り人ですか?」  痛いと喚く青年の言葉を無視したベニーが、女性に話しかけた。その声に反応した女性がベニーを見てから、俺の顔を意味ありげに凝視する。見つめられる意味がわからなくて困惑し、視線を伏せたタイミングでベニーが肩に移動させてくれたので、女性と目を合わせないようにすべく、ベニーの後頭部に顔を寄せた。 「そうです。学校でもキースが問題を起こさないかと、ヒヤヒヤしっぱなしですわ」 「彼は英語の補助教員として、きちんと仕事をしているように見受けられますが、貴女の目にはそう映らないんですね」 「凛花は口煩い女だからな、僕に注文をつけすぎなんだよ!」
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