抗えない想いを胸に秘めたまま、おまえの傍にずっといたい

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 怒った女性が耳たぶを掴んでいた手を使って、青年の腕を揺さぶりながら返答を促す。するとベニーを見つめていた青年の瞳に、嫌な鋭さが宿った。  その様子でなにかされると瞬間的に思いつき、いつでも飛びかかれるように俺が身構えたというのに、ベニーは真正面から青年の視線を受け続ける。  余裕のある態度が面白くなかったのか、青年はどこか仕方なさそうに話しかけた。 「そんなにそのネコ、大事なんですか?」 「大事ですよ。本来ならこの子を弓で狙った君に報復するところですが、争いを好みませんので、手は出さないであげます」  即答したベニーは、冷ややかな微笑を唇に湛える。妙な面持ちに違和感を覚えたのでまじまじと見つめたら、ベニーの瞳が赤く光ったので心配になり、小さく鳴いてみせた。 「にゃぁ……」 「先輩大丈夫です。私は先輩のように、好戦的ではないですから」 「変なネコの名前!」 「キース!!」  女性の問いかけを無視した青年は、ベニーが指をさした場所へ、さっさと身を翻して行ってしまった。 「申し訳ございません。いつも注意しているんですけど」 「凛花さん、彼が普段はあのような失礼な態度をとらないこと、ご存じなんじゃないですか?」 「そんなことないです。職場が変わるたびに気に入らない相手に対して、キースから食ってかかるものですから、苦労させられています」  弱りきった女性の表情に、ベニーはふむふむと何度も頷き、諭すように語りかけた。 「きっと、ヤキモチを妬いたのでしょう。他の人が凛花さんと親しくしているのが、彼は嫌なんだと思います」  まるですべてを見知ったかのように語るベニーに、女性はもの悲しそうな顔をした。このまま泣き出してしまうんじゃないかと焦る俺を他所に、ベニーは穏やかに口を開く。 「貴女方がこの世界に転移させられた理由は、ご存じですか?」 「なにも言われておりません。突然命令が下ったんです」  きょとんとした様子で答える女性に、ベニーは憂鬱な影を頬のあたりに漂わせながら説明する。 「私がいるからですよ。自分を想う見守り人を散々利用し罰を受けさせるという、つらい目に合わせた私がいるから……」  両手を握りしめる感じが、こわばった肩の動きで伝わってきた。普段見せることのないベニーの顔つきを間近で凝視してみた。 「そのことについては、噂で耳に入ってます」 「そうでしたか……」 「キースに私が同じようなことをしたらどうするかを、聞いてみたのですが――」 「素直じゃない彼にそんなことを問いかけても、本音を話さないでしょうね」
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