抗えない想いを胸に秘めたまま、おまえの傍にずっといたい

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 ベニーの全身を覆う炎を消そうと、迷うことなく体当たりした。少しでもいいから炎が小さくなってほしいと考え、何度も何度もベニーに身体をぶつける。 「先輩……」  はじめて炎を見たときは恐怖しか感じなかったのに、今はそんなことなんてどうでもよくなっていた。大好きなベニーを助けなければならない使命感が、俺を進んで突き動かす。 「――なるほどな」  黒ずくめの男の呟きと同時に、パンッという手を叩く音が耳に聞こえた。その瞬間に炎は跡形もなく消え失せたので、体当たりしかけた俺の足が止まる。 「主人の危機を感じて身を呈したのか、あるいは前世の記憶がどこかに残っているせいで、こんな馬鹿げたことをしたのか」 「先輩は馬鹿じゃありません。訂正してくださいっ!!」  静まり返った周囲に、ベニーの怒鳴り声が響き渡った。轟々と燃え盛る炎を全身にまとっていたのに、どうやら無事らしい。  ふたたび噛みつきそうになるベニーを止めなければと、ズボンの裾を咥えて横に引っ張ってみる。そんな俺の行動を無視して、黒ずくめの男に向かって足を動かそうとするから、当然引きずられてしまった。 「主人よりも、飼い猫のほうが冷静のようだな。おまえたちは、ふたりで一人前と言ったところだろう」 「そんなこと、言われなくてもわかってます。私はいつまで経っても半人前で、先輩は傍でフォローしてくれました」  震えるベニーの声に顔をあげたら、唇をかみしめて両手を握りしめる姿が目に留まった。なにかに耐えながら足を踏みしめるベニーに、ズボンの裾から口を外す。 「にゃあ……」 「ベニー・ロレザス、もう無駄な行動をするな。そんなんじゃ大切な飼い猫を心配ばかりさせて、寿命を縮めるだけだ。受け取れ」  黒ずくめの男がポケットから、なにかを投げて寄こした。それはベニーが獲物を狩ったときに食べている、赤くてまぁるい果物だった。 「学年主任……」 「ひとりと一匹で一人前のおまえが、めでたく恋人と一緒になり、無事に天寿をまっとうできるか、他の奴と賭けをしているんだ。頼むから俺を勝たせてくれよ」
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