不幸は突然に

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不幸は突然に

「ねぇ、私はあとどのくらい生きていられるの?」 彼女が僕に問いかけてくる。 僕は口が動かず床に視線をおとした。 彼女に異変が訪れたのは1ヶ月前。 ちょうどデートをしていた時だった。 彼女が突然呼吸困難となり、そのまま倒れてしまった。 僕は焦り震える手で救急車を呼んだ。 病院に着き、彼女は意識を取り戻して一安心だったがお医者さんに呼ばれ僕は彼女がいない個室に連れてこられた。 「残念ですが…彼女は…」 末期ガン です 信じられなかった。信じたくもなかった。 そして、生きていられるのはせいぜい2ヶ月だと余命宣告言され、僕は人生で最大ショックを受けたのであった。 中学生になってから一度も涙をだしたことは無かったのに、その日に限っては視界が見えなくなるほどの涙がでて、ベットのシーツが水たまりになっていた。 「ねぇ、悠人。」 自分の名前を呼ばれて我にかえる。 「気づいてた。…あの日倒れたときから薄々気づいてたの…。だって、ゆう…と…グスッ。悠人の顔が…ッ今まで以上にないくらい辛そうだったんだもん…ッ」 彼女の目からは大粒の涙が溢れる。 僕はとっさに彼女のことを抱きしめる。 「うっうぅ。私、死にたくないよ。悠人とまだいたいよ…ッ」 「僕もだよ…ッ。お願いだ…泣かないでくれ。僕は君の笑顔が大好きなんだ。だから…だからッ…」 彼女になんて声をかければいいのか分からない。 ただただ彼女の悲しい泣き顔を見たくなかった。 彼女がガンであることを嘘だと思いたかった。
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