2.陰陽師が見る宵山

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「長刀鉾、混んでたな」 「歩道を歩いていたから、抜けるのが大変だったね」  わたしたちは、ようやく長刀鉾の横を通り抜け、烏丸通に向かっていた。横田君と実穂が、途中で貰ったうちわで、パタパタと顔を扇ぎながら話している。うちわには配っていたお店の宣伝と、親切にも山鉾町のマップが載っている。 「長刀鉾って、鉾頭に長刀が付いていてかっこいいわよね」  わたしが隣を歩く追坂君に話しかけると、彼は、 「僕もそう思う。鉾頭の長刀は元は金属製やったみたいやけど、今は竹製なんやって。金属製やと重たいし、危ないからみたいやで」 と教えてくれた。 「へええ……」  追坂君は博識なのだろうか。 (柔らかな京都弁とか、物知りなところとか、ちょっと颯手に似てる)  従兄の顔を思い出し、 (……颯手、まだ怒ってるかな…………) 約束を反故にしてしまったことに対して、今更ながら、少し罪悪感を感じた。
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