2.陰陽師が見る宵山

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 四条烏丸の交差点までやって来ると、 「出てる、出てる!」 横田君が嬉しそうに声を上げた。烏丸通の左右に、夜店の屋台が並んでいる。 「さっそく何か食べよう」 「そうだね」  横田君の誘いに、実穂が頷く。 「ほんまに横田は、花より団子やなぁ」  追坂君が呆れたように言ったのへ、 「長刀鉾は見たし、もうノルマは達成した」 横田君は胸を張った。 「杏奈ちゃんは何を食べたい?」  実穂に笑顔で問い掛けられ、 「うーん、そうね……」 わたしは人差し指を唇に当てて考え込んだ。お腹が空いているといえば空いている気もするし、帯が少し苦しくて、あまり食べられないような気もする。 「軽いものでいいかしら」 「じゃあ、たこ焼きを半分こする?」 「そうね」 「それじゃ、まずはたこ焼き屋を探すか」  横田君の先導で、烏丸通を北へと上がっていくことにした。 
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