2.陰陽師が見る宵山

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「おい、娘」  居丈高な声で呼びかけられ、わたしは吃驚して、 「きゃあっ」 と声を上げた。振り向くと、先程の鎧姿のおじさんが、偉そうに腕を組み、わたしたちを見ている。 「わっ!誰、この人!?」  わたしと同じように振り向いた追坂君が、おじさんを見て、目を丸くした。そんな追坂君に、わたしは更に吃驚してしまった。 「追坂君、もしかして、この人が見えているの!?」 「えっ?目の前にいるおじさんなら、見えてるけど……?」  わたしが何を言おうとしているのか分からない様子で、追坂君が困惑した表情で小首を傾げた。 (どういうこと?追坂君も、人ならざる者を見ることが出来るの?) 「この人なんで鎧を着てるはるんやろ。宵山に、時代まつりみたいなイベントあったっけ?」  追坂君がわたしの耳元で囁いたので、 「違うと思う」 と首を振りながら、どのように説明したらいいのだろうと考える。それに、なぜ彼には人ならざる者が見えているのだろう。 「お前たち、何をごちゃごちゃ言っている。私の話を聞け」  こそこそと会話をしていたわたしと追坂君の間に割り込むように、おじさんが身を乗り出した。おじさんが間に入ったので、わたしの手は、自然と追坂君の腕から離れる。すると、 「あれ……?今、居はった、おじさんは?」 追坂君が目を瞬いて、不思議そうな顔になった。 「ねえ、星乃さん。今、目の前に、鎧姿のおじさんが居はったよね?」 「うん、いるわ。まだここに」 (えっ?見えていたと思ったのは一瞬で、やっぱり追坂君には見えないの?)  訳が分からない気持ちで追坂君の顔を見つめていると、 「星乃さん。何だか気味が悪いから、早く行こう」 追坂君がわたしの手を掴んだ。その瞬間、 「わあっ!」 と彼は再び驚きの声を上げた。 「おじさん、やっぱりいた!」  どうやら、再び、おじさんの姿が見えるようになったようだ。 「えっ?なんで?どうなってるん?おじさんが消えたり現れたり……」  頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになっている様子の追坂君を見て、わたしはハッと気が付いた。 (もしかすると、わたしが追坂君に触れている間だけ、彼は人ならざる者が見えるのかもしれない)  それを確かめるため、追坂君から手を離し、もう一度手を握る。すると、追坂君は、 「あれっ、また消えた……あっ、また現れた!何でやねん」 すっかり混乱した様子で頭を抱えてしまった。
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