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「お前たち、いい加減にしろ。私を無視するな!」
追坂君の力の確認を優先させていたら、鎧姿のおじさんに怒られてしまった。
結構迫力のある声だったので、
「すみません……」
「ごめんなさい!」
わたしと追坂君は反射的に首をすくめて謝った。
(あれ?なんで謝ってるんだろう?)
すぐに我に返り、内心で首を傾げたが、おじさんはわたしたちの素直な謝罪を聞き、気を良くしたのか、「ふむ」と言って腕を組み直すと、
「お前たちには、私の姿が見えているようだな」
と言った。わたしは、おじさんの迫力に負けない様に胸を張ると、
「見えているわ。こっちの彼は……たぶん、今だけだと思うけど」
と答える。
「なるほど。いい召使を見つけた」
おじさんはわたしの答えに、にやりと笑うと、
「お前たち、私の家来になれ」
と命じた。
「は!?」
「家来!?」
突然の命令に、わたしと追坂君が素っ頓狂な声を上げる。
「私は探し物をしている。ひとりでは探し出すのが難しいと思っていたのだ。人の世の物は、人の世の者に探させる方が効率が良かろう」
どうやらこのおじさんは何か探し物をしていて、それをわたしたちに見つけさせたいらしい。
このままだと、ややこしいことになりそうな気がして、
「良く分からないけど、わたしたちは今、友達と宵山を回っているの。あなたの家来になっている暇はないわ」
わたしはきっぱりと断ると、
「行きましょう、追坂君」
と彼の手を引っ張った。
「えっ、あ、うん」
おじさんの命令に呆気に取られていた追坂君が、慌てたように返事をする。
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