ヒカリ

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ヒカリ

「どこに描きに行く?」 「光生宮(こうしょうぐう)でしょっ」 「どこそれ?」  川神(かわかみ)小学校に通う少女ヒカリ。校外に絵を描きに行く授業があり、仲の良いマミと一緒に光生宮に行こうと提案したところだった。  しかし、マミはお宮のことを知らないようだった。二人は学校ではよく一緒にいるものの、家の方向は正反対。また、そのお宮は少し山手の方にあり、ほとんど人も来ないような場所。学校から見て同じ方角に住んでいる人でも知らない人がいるくらいだった。 「あっ、光生宮?あそこはやめた方がいいよ」  場所の説明をしていると、カズミチが割り込むように口を挟んできた。 「あそこは心霊スポットだし、「かげぼうや」が出るって話もあるんだよ」 「かげぼうや?」 「マミ、気にしなくていいよ。かげぼうやって光生宮に伝わる妖怪のことだから」 「ヒカリ、馬鹿にしない方がいいよ。かげぼうやは昔この土地が貧しかった時代に生け贄になった子供達が妖怪になってるんだから」 「それくらい知ってるよ。別に馬鹿にもしてないし。知ったかぶりしたいだけなら言わない方がいいよ」  この日は場所決めや同じ場所に行く人達の確認等だけ行い、後の時間は自習となった。 「ねえ、何でカズミチも一緒なのっ」 「僕の自由でしょ?  でも、かげぼうやを馬鹿にする奴が腹立つってのもあるけどね」  光生宮に行くメンバーは、ヒカリ、マミ、カズミチ、それからユウジロウの4人。この日は特別に自転車の許可が出ていたため、自転車でお宮に向かう。カゴの上に画板を置いて固定する者もいれば、画板を背中にかけて画用紙だけを丸めてカゴに入れて行く者もいた。  ヒカリはカズミチと一緒なのが不満のようであった。もともと大雑把なヒカリと色々と細かいカズミチはよく口論をし合う間柄だった。 「ヒカリ、だいたいそうやって画用紙丸めてると描くときにクルンってなって描きにくいよ」 「私がこうしたいからしてるんだからいちいち言ってこないでよ」  ユウジロウは2人の様子を何も言わず笑って見ていた。 「2人はほんと仲がいいね。ユウジロウ見てよ。めっちゃ笑ってるよ」 「あ・・、いや、ごめん。でも2人はよくそうポンポンと言葉が出てくるなぁって感心して聞いてたよ」  ユウジロウは細い目を更に細くした笑顔でそう言った。 「そう言えば、マミとも話してたんだけど何でユウジロウは光生宮にしたの?」 「あ、いや」 「僕が誘ったんだよ。どこにしようか悩んでるみたいだったから。一緒に行こうって」 「もうっ、カズミチには聞いてないって」 「あ、いや、カズミチ君が言うとおりなんだよね。  俺、こういうの決められないから」
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