言えない言えない言えないよ

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でも玉井さんは顔を上げなかった。富士子の方を見もしない。 ( 違う人みたい。) 玉井さんの髪は脂でベットリと頭に張り付きフケが大量に頭と肩に溢れていた。いつも意地悪な目をギラギラさせていたのに目を伏せている。富士子は通り過ぎて教室を出ると玉井さんと同じ中学の子と目が合った。彼女はいつも髪をふんわりと綺麗にブローして優しい笑顔の女の子だ。塾に通わずテストだけ受けに来る、よその学校の富士子に明るく話し掛けてくれる友達だ。 「 玉井さん、感じが違う。」 富士子が言うと、それまで輝くような笑顔を振りまいていた彼女は真剣な表情を見せて、 「 ああ、玉井さんならイジメられてるから。あの人ね前の小学校で凄いイジメをしてたんだって。部活で大会の時とかに前の学校の友達から聞いたって話を私も友達から聞いたの。特に一人の女の子をずーっと何年もイジメてたって。もうその子が自殺するんじゃないかってみんなで心配するくらいのいじめだってさ。ただその女の子が自分より頭が良くてお金持ちのお嬢様だってだけで憎らしいって言ってたんだって言うの。その女の子はね優しくていい子で可愛くて本当に何も悪い事をしない子だったんだって。だからそれが皆んな知ってる噂になって今イジメられてるんだよ。」
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