通勤ラッシュ

1/1
前へ
/61ページ
次へ

通勤ラッシュ

私、鈴木千賀子(20) 会社まで電車通勤の為、毎日通勤ラッシュに巻き込まれている。 「次はー片浜。片浜ー。お降りのお客様はお忘れもののないよう、お気をつけ下さい」 そのアナウンスが終わって、数分で列車は駅に到着する。 列車のドアが開いた。 「ーーのいてー!!のいてー!!」 怒鳴るような大声を発しながら、年老いた白髪の男が入ってくる。 70は越えているだろう。 見た目だけで、私はそう思った。 「ーー」 誰に発しているかわからない怒鳴り声に、なるべく関わらない様にだろう。 少女は白いイヤホンを耳につけ、音楽を聞き始めた素振りを見せる。 年老いた男は、尚も怒鳴り続ける。 「ーーこんなもん」 年老いた迷惑じじいは、高校生くらいだろうか?少女の耳にはまっている白いイヤフォンを強引にとって、大きな声で話始める。 「ーーおじさん、入れないから。だからのいて!って言ってんのに、、」 耳が悪いのだろうか? 相変わらず声が大きい。 怒鳴っているような声。学生服を着たこの少女よりも、白髪の怒鳴り散らしている男の方が迷惑な存在なのは、明白だった。 ーーくだらない。 ーーちっちぇー男だな。このオヤジ。 満員電車の中で、あらゆる目が見知らぬ男に冷ややかな視線を向ける。 良くある日常の一コマだった。 私も遠くからそれを眺めていた。つい一ヶ月ほど前まではーー。 まさか、私がその対象になってしまう日が来るとは思いもしなかった。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加