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返信
私は101号室の藤木さんからの手紙に返信を書いていた。
「初めまして。私は鈴木と言います。よろしくお願いします。仲良くしてね。104鈴木」
短めの挨拶をして、手紙は終わらせた。
今度、突撃訪問してみよう。
始めての手紙で、突然訪問を求めるように話すのも何かおかしいし。
ピンポーン。
珍しく玄関のインターフォンが鳴る。
ーーはーい!
そう声をかけながら、玄関のドアを開けた。
山下さんだ。
彼女が目の前に立っていた。
「突然、ごめんね。今大丈夫?」
「うん。ぜんぜん大丈夫!どーしたの?」
私は聞いた。
「また101号が埋まったわね」
彼女は笑って、半ば強引に103号の部屋に私を連れていった。
山下さんの住む103号室は、104号室とほぼ同じ間取りだ。
結構、整頓されている。
物が少ない訳ではないが、私には過ごしやすい空間だった。
101号室の藤木さんに今日会ったのよ。ちょうどゴミ捨てに行く時だったんだけど、、。
「そうなの?どんな人だった?」
ワクワクしながら、私は山下さんに聞いた。
「それがね。全然普通なのーー前の田中さんタイプでもなく、102の山田さんタイプでもない。ぜんぜん普通の感じのいい人よ?」
「普通の人のがいいじゃない?」
「このアパートに住む人は死ぬのよ。私は今、このアパートに住み始めてから一年が経とうとしてるけど、、」
「それよりさ、、山下さんはなぜこのアパートに住もうと思ったの?」
「だってさ、家賃安いじゃん?もともと、霊的なものは信じてないし、、幽霊なんて見える訳じゃないし、、。それに死ぬ気ないし」
山下さんは笑った。
話していて、どーやら彼女は安い物件で探したらしい。話していても変な人ではない。きっとごくごく普通の人なんだろう。
「101に越してきた藤木さん、、最近、人がなくなったのは知ってるのかな?ーー見た感じはぜんぜん普通の人だったよ」
「じゃ、今から藤木さんちピンポンしてみる?」
山下さんと千賀子はイタズラな笑みを浮かべている。
101のドアの前でにやけながら、101のインターフォーンを鳴らした。
「はーい。少しお待ちください」
ドアの向こうから、甲高い女の声がする。
そっとドアが開いて、女が覗き込んだ。
「こんにちは。私たちこのアパートで住んでる104の鈴木と103の山下です。これからよろしくね」
「あ、、どーもよろしくお願いします」
そんな話をしていると、、
「立ち話も何ですからどーぞ上がってください」と藤木さんが言う。
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