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罰ゲーム
ーー罰ゲームの為、神奈川までヒッチハイク。
そんな手書きの看板をぶら下げて、私は色んな店が混在するスーパーの駐車場入り口で待った。
そもそも、私がなぜこんな事をしなければならなくなったのかと言うと、暇を持て余した婦人三人で、パチンコ屋に行ったからだ。
そこでカケをした。
誰が一番勝つか?二番目は?ビリになった人は罰ゲームで、神奈川までヒッチハイクで行く。
そんな流れになってしまった。
そして私はそのゲームに負け、ビリになった為、こうして神奈川までヒッチハイクで行く事になったのだ。
すれ違う人が、私を横目に見て笑っている。
駐車場には今この時間はカップルが多い様だ。
ーーやばい人いる。見てみて。
そんな声と共に振り替える人々の声が聞こえる。だんだんと恥ずかしさが生まれてくる。
しかし、別に人の目なんて私はどーでも良かった。
山下さんや、藤木さんが遠くから私を見て笑っているのも分かっているが、こんな事をしてる自分が楽しくて仕方ない。
人間なんて人生と言う時計は、いつ終わるか?分からないのだ。
だからこそ、今この時が楽しめればいい。
「ーー何?どーしたの?罰ゲームって、、」
見知らぬ男が声をかけてきた。
「カケに負けてね。神奈川までヒッチハイクしなきゃいけなくなったんだ」
「ーー神奈川?俺、横浜に帰るよ!乗ってく?」
軽い口調で男は言った。
「うん」
もー神奈川まで行けるかな。
しかし、世の中、そんなに上手く行くだろうか?
深い藪の中に捨てられたり、殺されたりするかも知れない。
そんな不安が不意に甦る。
しかし、後ろの車には二人がいる。大丈夫だろう。
そう思うしかなかった。
男の車に乗り込んでから、男の名前を聞いた。
「ーー俺の名前は、勝(まさる)だ。君は?」
「私は鈴木千賀子。よろしく」
それで、神奈川のどこに行くんだ?と勝は聞いた。
ーーそーいえば、、どこへ行くんだろう?
神奈川まで行って、ヒッチハイクで帰ってくる。それが目的ではあるが、神奈川のどこまで行けばいーのか?
私は疑問に思い、山本さんに電話をした。
三度目のコールを待たずに、彼女は受話器を取った。
「もしもし?」
声が遠い。
しかし、山本さんに繋がってるはずだ。
「ねー、神奈川のどこまで行けばいーんだっけ?」
「神奈川に入ったらいーんだよ。その車のすぐ後ろにいるから」
「うん。わかった」
受話器を置くと、私は言った。
神奈川まで入ったら、皆で戻るだけみたい、と呟いた。
「そっか。じゃその時下ろすよ」
「うん。ありがとー」
見知らぬ男の人に乗せてもらうのは、少し抵抗があったが、彼はとても優しい紳士だった。
どーにかこーにか罰ゲームを終え、家に帰ると藤木さんと山下さんがにやついていた。
ーーあー面白かった。
そう声がはもる。
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