31人が本棚に入れています
本棚に追加
始まり
「のいてー!!」
開いたドアから、顔を出したのは、、あの時の迷惑じじいだった。
ーーあぁ。うるさい朝が始まる。
「ーーちょっとねーちゃん。のいて!!」
満員電車の中、罵倒するような声が私に向けられた。
いつもは少し離れているから、ちょっと安心していたのに。
ーーなんで?
ーーなんで朝からこんな見知らぬオヤジに罵られなければいけないのか。
ーーなんで、私なのか?
ーー混雑しているのだから、狭くても仕方ないじゃないか。
声にはしないが、私の中で腑に落ちない思いをめぐらせていた。
そんな時。
「ーーおいおい!またやってんぞ。あのジジイ」
中学生だろうか?
男子二人くらいの学生だった。
「ーーうるさいっ。お前らみたいなのが一番キライなんだ」
迷惑ジジイのターゲットは、一瞬にして私とは違う男子学生の方に変わった。
「ーーおい、オッサン。さっきからお前の声のが周りの迷惑になってる事に気づかないのか?」
男子の学生を庇うようにして、少し関西弁の様な話し方をしている30から40才くらいの男が言った。
「だいたい、混んでんだからしょうがないだろ?みっともない」
毎日の様に繰り返されるこのやり取りを、見かねての事だろう。
「ーーお前、ちょっと表に出ろ!!」
70は過ぎているだろう、その風貌の男は、まだ30から40くらいの筋肉質な男に言った。
どう見ても敵いっこない相手だ。
特に喧嘩をするようにも、見えなかった(30から40才の方)その男は、面倒臭そうな顔で答えた。
「ーーわかったわかった。出てやるから!」
列車は止まった。
「じゃ、オッサンも出ろよ!」
白髪の男は筋肉質な男と出ていった。
毎朝この迷惑ジジイに絡まれるのかと思うと気が滅入ってしまいそうだった。
ほんの数分。
迷惑ジジイに絡まれただけで、私はウンザリとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!