迷い

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迷い

ーー引っ越し、、しようかな? まだしばらくは考えていなかったのだけど、今朝の出来事はそれを考えさせるには充分な出来事だった。 すぐにでも、引っ越そう。会社に近い場所。電車通勤をやめられる場所に引っ越そう。 私はそう決めるとすぐに、会社に近い不動産屋さんで話を聞いてみる事にした。 ガラス張りの自動ドアが開くと目の前に小さなカウンターの様な物がある。 真ん丸い顔で、ひげ面をした男が出てきた。 「はい。いらっしゃい」 無愛想な対応だと思った。しかし引っ越したい気持ちは変わらない。 「あの○○商事の近くで、何か空き部屋ありませんか?」 「つい、先日も貸したばっかりでしてねぇーーない事はないんですが」 不動産屋さんのどこか含みを持たせた言い方が気にはなっていた。あえて、そこは触れずに話を聞いてみることにした。 「家賃22000円。2LDK。しかし、ここはーー」 うーむ。 まるでそう言いたそうな顔で、男は顎に手を添えた。 「ーーもしかして、、いわゆる事故物件ですか?」 ーーその通り。 この部屋で、事件が起きたんだ。それはまだ残暑の残る今頃の時期だったかな? うなだれて男はその事件の事を話し始めた。 不動産業を営む彼にとって、その話は話したくもない出来事なのだろうが、告知義務という物が存在しているのだから仕方ない。 ーー電車通勤で、絡まれるか? ーー事故物件か? 千賀子にとってそれは、まさに究極の選択である。 「ちなみに、これ以外の部屋はないですか?」 「あいにく、満室でーーうちで空いてるのはこの部屋だけなんだ」 不動産屋さんの案内のもと、私はそのアパートを見に行く事にした。
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