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影
「ーーねぇねぇ、知ってる?」
「知ってる。あのアパートにまた人が住むんでしょ?」
「そうそう。また若い女の子らしいよ。昨日、あの部屋を見に行ったんだってーー」
学生服を着た女子たちが、噂している。
不動産屋さんに案内され、そのアパートを管理している大屋さんの住む家まで歩いていった。
徒歩3分程度の距離だった。
「ーー本当にここに住むのかい?」
年配の太ったおばさんが言った。
「はい。どーしても会社に近いところで住みたくてーー」
「お嬢さん、大家の私が言うのも何だけど、やめておいた方がいい。この部屋だけはーー」
大屋さんの目は、真剣そのものだった。
「ーー聞いているんだろ?この部屋での事」
「はい。事件があった部屋だと聞きました。私はそれでも構わないです」
「ーーどーしても住むって言うのかい?」
「はい」
千賀子は真剣に答えた。
大屋さんの家の玄関には、大きな張り紙がしてある。
アパート「影」に住む住人たちの決まり事がある。
1つ。
隣の家に毎日手紙を書く事。
2つ。
死なないこと。
とある。
「ーーあの、これはどーゆー意味ですか?」
千賀子は聞く。
「このアパートに住む人間は、何かしらの理由で死んでいくんだよーーここは呪われている。だからこそ、手紙と言う方法で互いの安否確認を兼ねて欲しいからなんだ」
「なるほど。わかりました」
「ーー最後にもー1度、確認するよ?本当にこの部屋に住むのかい?」
真剣そのものと言った顔で、大屋さんは言った。
「はい。決意は変わりません」
「決まり事は守れるかね?私は何があっても責任はとれないよ」
はい。わかってます。よろしくお願いします。
千賀子は頭を下げると、大屋さんが用意してあった契約書にサインと印鑑をした。
ーーこれから私が住む部屋。
ーーどんな未来が待っているのだろう。
私は期待を膨らます。
これからの未来にーー。
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