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決まり事
このアパートに住む住人は、同じアパートに住むすべての住人と手紙のやり取りをしないといけない。
昨日、大屋さんが話していた。
挨拶のような文面の手紙を、玄関のドアについている小さなポストに投函する。
ーー周りの住人から返事が来るだろうか?
ドキドキ、ワクワクする。
なぜ人はこのアパートに住んではいけないなどと言うのだろうか?
その言葉の意味がよく分からないまま、私にとって、一回目の朝が訪れる。
まだ引っ越しの荷物も片ついていないが、少しずつやろう。少しずつ、、。
まず「衣類」と書かれた段ボール箱を開け、中身を整理していく。
13時頃。
玄関の方でガタン、と音がした。
ワクワクしながら私は玄関へと向かう。
玄関のドアについた小さなポストから、手紙が出ている。
急いでそれを手に取ると封をあけた。
「ーーよろしく。このアパートで、挨拶なんか無意味だから。101田中」
そう書かれていた。
101号に住んでいるのは田中と言う人物らしい。男なのか?女なのか?
性別すら分からない、田中と言う人物に私はものすごい興味を引かれた。
101の田中と言う人物は、一体どんな人なんだろう?
手紙が返ってきたと言う事は、このアパートのところだけは動いていると言う事だ。
そのうちタイミングが会えば、会えるだろう。
ガタンッ。
またポストに手紙が届いた。
私は玄関に急いだ。
スマホでのLINEや、メールと言ったものがありふれているこの世界にいながら、このアパートだけが、時間の流れを止めてしまったかの様に感じられた。
手紙の封を開ける。
「このアパートで住む者は死ぬ。102 山田」
まるで脅迫文の様だった。
しかし、話は聞いている。事故=心理的瑕疵その言葉が消えることのないアパートだとーーそれはつまり、繰り返し人が死んでいくアパートなんだろうと理解はしているつもりだ。
しかし、心のどっかで半信半疑な私がいた。
そんな事を思っていると、また手紙が届いた。
「いつまで一緒に暮らせるか?分からないけど、とりあえずよろしくね。103号山下」
このアパートの住人の中では、山下さんが一番マトモな人に感じられた。
それにしてもこのアパートの住人はみなマイナス思考だ。
「死ぬ」そんな事はあり得ない。
人間そう簡単に死ねるものではないし、意思を強く持っていれば、死ぬ事なんてないだろう。絶対にーー。
私は絶対に死なない。
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