タブー

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「だったら、俺もついていく」 「だめだよ。だって、学校が」 「学校なんて辞めて働く。薔子から、絶対に離れない。あんたから、なに言われても、俺の決意は変わらない」  君の体は、重くて、あたたかくて。  声を震わせて告げてくる君が、なによりも愛おしい。  私はつま先立ちになって、君の後頭部を撫でた。少し長く伸びた、やわらかな髪に触れると、泣きたいくらいに胸が苦しくなる。 「ヨシヨシって。それさ、ますます子ども扱いされてる気がする」 「違うよ。私も、やっぱり大地と別れるなんて無理だと思った」  だって、こんなにも好きだ。  好きで、大好きで、嘘がつけないくらい、愛おしくて。 「だからね、高校卒業したら、追いかけてきてよ」 「薔子……」 「今度こそ、逃げない。待ってる。新しい住所は教えるから」  今夜、黙って出発するつもりだった。行き先も告げずに、消えようと思った。  でも、そんなことしたら、一生後悔する。  取り返しのつかない傷を、君に刻みつけてしまう。 「駄目」  吐息まじりに言われて、息が止まる。 「俺、あんたの引っ越し、見届けるから。ちゃんと、間違った住所言われて、誤魔化されないか、自分の目で確かめる。じゃないと、行かせない」  君の指が、私の手をやんわり包みこむ。その感触一つで、昨晩の行為をなぞりそうになる。  ごめんなさい。  心の中で謝る。私は、君の先生にはなれなかった。男と女でしか、いられなかった。間違いだとわかっていても、君を好きすぎて、正すことができなかった。 「必ず、夏休みには会いに行く」 「うん。待ってる」  あいしてる。  その言葉は、二人とも同じタイミング。  照れ笑いで視線を絡ませる。  自然に、二人の唇が重なりあっていた。
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